だるまの漢字が語る物語:知られざる由来とは
縁起物として広く知られている「だるま」。日本全国で親しまれていますが、その背後には深い仏教的背景と文化的意味が隠されています。漢字では「達磨」と書き、これは実在した人物「達磨大師」に由来しています。単なる置き物ではなく、信仰、願掛け、再生の象徴として、日本人の心に深く根付いているのです。本記事では、「だるま」という言葉に込められた意味と、漢字が語る物語を深掘りしていきます。
達磨とだるまの違い—漢字の背後にある意味
私たちが親しんでいる「だるま」は、ひらがなで表記されることが多いですが、正式には「達磨」と書きます。この漢字は、インド出身の僧・菩提達磨(ボーディダルマ)から来ています。菩提達磨は、中国に禅宗を伝えた人物として知られ、日本でも「達磨大師」として信仰されてきました。
■ 「達」と「磨」が意味するもの
「達」は“通じる・届く・極める”といった意味を持ち、「磨」は“みがく・修行する”を意味します。これらを組み合わせた「達磨」は、修行を通じて真理に達する者という深い意味を持つ名前なのです。
伝説によれば、達磨大師は中国で9年間も壁に向かって座禅を組み続け、そのあまりの修行の厳しさから手足が腐ってしまったとされています。これが現在の「手足のないだるま」の由来です。

この逸話は、不屈の精神、耐え忍ぶ力、再生の象徴として、だるまに受け継がれています。「倒れても起き上がる」だるまの姿は、まさに達磨大師の精神そのものです。
願掛けの文化とだるまの成り立ち
日本におけるだるま文化の中心地とも言えるのが群馬県高崎市です。高崎だるまは江戸時代中期から作られ始め、農民の副業として広まっていきました。今日では年間100万体以上が全国に出荷されており、受験・就職・商売繁盛・健康祈願など、多種多様な願いに応えています。
最もよく知られているのが、目入れの習慣です。願い事を込めて片方の目を描き、願いが成就したらもう片方の目を入れる。これは「自分との約束」を可視化し、日々の努力を促す心理的な効果もあります。

だるまの色やデザインにも意味がある:
- 赤色:無病息災・家内安全
- 金色:金運・商売繁盛
- 白色:合格祈願・学業成就
- 黒色:厄除け・魔除け
また、近年ではカラフルなものや動物の形を取り入れた「アニマルだるま」、企業ロゴ入りのカスタムだるまなども人気を集めており、伝統と現代の融合が進んでいます。
「だるま」のお腹に書かれた文字の意味
だるまのお腹に大きく書かれている漢字にも注目してみましょう。よく使われる言葉には以下のようなものがあります:
- 福:幸福を招く
- 開運:運気の向上
- 必勝:勝利祈願(選挙や試合など)
- 商売繁盛:事業の発展
これらの文字は、職人の手で一筆ずつ丁寧に書かれており、単なる飾りではなく、祈りを込めた書としての意味を持ちます。

だるまの目や文字の入れ方は宗教や地域によって微妙に異なるため、購入時には説明書きや地元の風習に目を通しておくと安心です。
まとめ
だるまは単なるインテリアや置物ではなく、「達磨」という漢字に込められた禅宗の教え、そして日本人の信仰・再生・願望の象徴です。
この記事で紹介したポイント:
- 「達磨」は菩提達磨に由来し、修行と到達の象徴
- 手足のない形は不屈の精神を表現
- 目入れや色、文字にはすべて意味がある
何度倒れても起き上がる、というだるまの姿は、私たちが困難に立ち向かう姿勢そのものです。その形状や漢字、伝統に込められた意味を知ることで、だるまという存在がより一層身近で深いものに感じられるでしょう。

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